2001年秋には性懲りもなくファッション訴求を強化しましたが、万人受けするベーシックMDでメジャー化してきたギャップ社にとってファッションMDは不馴れな土俵で、トレンドを外してヤングの再取り込みに失敗したばかりか、30、40代顧客の離反を招いて情況はさらに悪化してしまいました。
2002年秋からは本来のコンセプトたる「シンプルクラシック「クリーンを強調してベーシックに回帰。
同時にギャップではジーンズのニューラインを投入、オールドネイビーではファミリ一対応の強化やサイズ拡充等で新規顧客開拓と売り逃し排除に努めています。
これまでの回復期と同様、定石どおりの施策であり、これが10月以降の回復をもたらしたと見られますが、本格的な回復につながるかはまだ予断を許しません。
ベーシック商品はコストパフォーマンスでターゲットやコールズに劣り、ファッション商品は感度でアメリカン・イーグルやパシフイック・サンウエアに及びません。
急速な多店化でブランドのエクイテイが希薄化してしまった以上、これまでの回復過程のようにベーシック回帰とテクニカルな対応だけでは本格的な回復は望み難いのが実勢です。
各ブランドのコンセプトをもう一度、明確にしてポジションの交錯を正し、それぞれのエクイティ再確立を図る必要があるのではないでしょうか。
全米のリージョナルSCは1800店余と言われますが、効率が期待できるのはせいぜい1000強で、大都市のダウンタウンまでフルに押さえてもギャップの適正店舗数は1300店が限界でしょう。
不振店を200店ほど閉鎖して店舗網を適正スケールまで縮小すれば、「ベーシック回帰+新鮮ライン投入」という定石で回復のシナリオに乗せられるはずです。
ギャッブキッズは現在、850店程度ですが、これはギャップと同数近くまで伸ばす余地があります。
バナナリパブリックは価格帯や洗練された感性から見て現在の446店は限界に近く、店舗数を増やすことなく高効率店に集約していくべきでしょう。
オールドネイピーは低価格ファミリ一対応という原点に回帰してデイスカウントストア等との競争力を回復させ、RSCの店舗を撤収して本来のパワーセンター立地やダウンタウンに集中すべきと思われます。
そのポジションなら850という店舗数はまだ限界ではなく、1200店までは間違いなく伸ばせるでしょう。
海外展開については、サンフランシスコ本社への極端な中央集権を改めて各国のマーケット対応をさらに許容し、ローカルラインの投入やパターン修正、独自のVMD運用で回復を図るべきだと思われます。
日本では既にこの手法で明らかな成果が出ていますから、フランスや英国でも同様な成果が得られるはずです。
これらの戦略を徹底するならギャップ社の業績は再び成長に転じ、「世界最大最強のSPAの座を揺るぎないものとできるに違いあません。
インデイテックス社、H&M社、ギャップ社、ファーストリテイリング社と世界の5大SPA企業の内の4社(もう1杜はリミテッド・プランズ社)を論評してきましたが、4杜はそのオリジンからトータルプロセスのフレームが異なり、マーケットやサプライサイドの要因による好不調の波もあるし市場の飽和限界もあります。
それをどのような施策で乗り越えて成長を維持してきたのか、どのようにしてトータルプロセスの精度を高め収益を向上させてきたのか、各社の事例から読み取ってほしいものです(ギャップ社のトータルプロセスについては、著者の既刊rSPAの成功戦略商業界刊を参照されたい)。
ブランド戦略による市場創造のトータルプロセスではラグジュアリーSPAたるルイ・ヴイトンから学ぶことが多いし、SPA企業以外でもトータルプロセスのフレームという点ではウォールマートやしまむら、プロセス精度という点ではしまむらやセブンイレブンに学ぶことが多いと思います。
21世紀にも成功するSPA企業の必須条件を挙げるとすれば、以下の6点となるでしょう。
ブランドビジネスとして、顧客のロイヤルティを維持向上させる統合的なエクイテイ戦略を企業の最重要ミッションと認識していること。
「ブランドビジネス」という意識も戦略も欠いては、もはやSPA事業の成功は考えられません。
店舗をブランド訴求の最強メディアと認識し、最適な環境と最善の運営で顧客満足を追求していること。
時代に置いていかれたインパクトを欠く店舗環境、清潔感や季節感、リズムを欠いた店舗運営ではメディア効果は望めず、顧客の足は遠のいてしまいます。
店舗の大型拠点化と限定供給商品によって多店化による過剰露出感を抑制し、飽和限界によるエクイティ消耗を回避していること。
店舗が増えれば必ず飽和感が出てきますから、地域単位で店舗の大型拠点化を徹底。
大型店の開設にあたっては近隣の小型店を閉め、限定供給商品等をキャンベーンして飢餓感を煽り、エクイテイの消耗を回避する必要があります。
企業都合に制約されない顧客最適な品揃えを追求し、常に新たなカテゴリーや新鮮ラインを加えていること。
それを可能とする企画・開発力と、顧客が期待する品揃えを追求してもトータルプロセスの効率を損なわないプロセス精度を実現すれば、顧客の離反による成長鈍化を避けることができます。
突出したバリューを短時間で創造する企画・開発体制と生産管理体制を確立していること。
自社で企画と生産仕様を最短時間で開発し、自ら生産ラインを管理して完成度の高い商品に仕上げるのが理想ですが、厳密な仕様と仕上げの管理が徹底されるなら生産のアウトソーシングは許されるでしょう。
企画・開発のアウトソーシングは、一流のデザインオフィスへの委嘱やクリエイティブなデザイナーとのコラボレーションに限るべきだと思います。
ラグジュアリーSPAでは自社企画・開発はもちろん、自社工場生産が約束ごとであり、ラインを拡張する場合も工場の買収や資本投下によって厳重な管理下に限定しなければなりません。
もちろん、ライセンス供与やOEM調達はタブーとすべきでしょう。
)ロジスティックスから店舗運営まで、最適な個店対応でバリューの消耗と運営コストを極小化するプロセス精度を確立していること。
立地と店舗の標準化、1T活用と物流プロセス革新をベースに最適配分と店舗業務の効率化を追求していけば、プロダクトアウトとマーケットインの最適な整合に近付くことができるはずです。
このプロセス精度が低いと多店化とともにロスとコストが肥大し、バリューを食いつぶしてしまいます。
SPAに限らないチェーンストア・オベレーションの基盤であり、プロセス精度の向上を疎かにしては内部要因で成長が頓挫してしまいます。
後の立地多様化後の立地多様化世紀末の郊外SC開発ラッシユバブル崩壊直後の92年、規制緩和でSC開発ラッシュが始まり、年間新設SCは109と史上初めて100SCを超えました。
景気後退下にもかかわらず翌年以降も高水準で推移し、大店立地法施行に伴う大型店出店空白期間を前に駆け込み開発が相次いだ2000年には149SCと過去最高値を記録。
92年から2001年1月末までの9年1月間にオープンしたSCは総計1039SC、総面積は1802万に達しました。
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